時計を見ると、５時３０分になっていた。

拓ちゃんと付き合って８ヶ月の記念日。
私は拓ちゃんの会社近くの駅で５時に待ち合わせをしていた。

「拓ちゃん、また残業かなぁ…」

季節は夏。夕方といっても蒸し暑く、私は苛立ちをつのらせていた。
辺りを見ると、サラリーマンやＯＬばかり…。
自分が浮いている様な気がした。

『麻里さん…ですよね？』

私の背後から、聴き覚えのある優しい女性の声がした。

振り返ると、そこには拓ちゃんの同期の三宅さんが立っていた。

彼女は相変わらず、とても綺麗で、私はドキッとしてしまった。

「三宅さんでしたよね？お久しぶりです」

私は笑顔で彼女に話しかけた。

『お久しぶりです。安藤くんと待ち合わせですか？』

「そうなんです！拓ちゃん…じゃない安藤さん仕事ですか？」

『拓ちゃんで良いですよ。安藤くん緊急で会議が入っちゃったみたい』

「そうなんですか…」

『あの…良かったら一緒にお茶でもしない？安藤くんが来るまで時間かかると思うし』

落ち込む私に気を使ってか、彼女は笑顔で私を誘ってくれた。

「良いんですか？！ぜひお茶して下さい」

勢いよく即答する私とは対照的に、彼女は笑顔でうなずき返事をした。