彼女とカノジョ

会社の前に着くと、拓ちゃんと彼女が待っていた。

「来た来た！麻里こっちだよ」

拓ちゃんは私の事を手招きする。私は拓ちゃんの隣で微笑んでいる彼女にしか目が行かなかった。

「お待たせして、ごめんなさい」

『お礼なんて良いのに』

彼女は優しく私には微笑んだ。

…彼女に伝えなきゃ。私は、その思いでいっぱいだった。

「この前は、ありがとうございました。あの…今日ゼミがあって大塚先生に三宅さんの事を話したら、懐かしいなって言ってました。あと、先生はやっぱり独身でした。三宅さんは、カノジョと結婚してるって思ってるんだなって言ってました」

私は、彼女の反応を全く気にせず１人で伝えたい事を話続けた。

彼女は、私の方を見て頷きながら話を聞いている。その表情は、いつもより悲しそうだった。

「三宅さん！先生は今日は仕事だから、遅くまで大学にいると思います。私は何があったか全く分かりません。それに余計なお世話かも知れませんが、何か伝えなきゃいけないと思って」

彼女は、優しく微笑んで、私の頭に手を置いた。そして、優しい口調で話始めた。

『麻里さん、ありがとう。いつまでも立ち止まってちゃ駄目よね。私、先生の所へ行ってくるわ。麻里さんに、今度お話するね』

彼女は、そう言って笑顔で駆け出して行った。

彼女と先生の間に何があったのか分からない。それに、カノジョの存在も…。

「何が何だかサッパリ分からないんだけど」

拓ちゃんが不思議そうな顔をして、私を見ていた。