「…はなして」
その声に相手の体がビクリと反応する。
それと同時に徐々に自由になっていく体。
少しずつ離れていく、二人の距離。
相変わらず彼の顔は見れない。
「また…何も言わないのか…?」
名残惜しげに指先だけを握られた。
上から聞こえてくる声。
甘えるように囁かれる。
気を、許してしまう…
やんわり握られた手を振り解き、踵を返した。
これ以上、ここにいたくない。
彼の傍にいたくなかった。
「そっか…」
後ろで気弱そうに聞こえてくる呟き。
それを聞こえていないという風に、駆け足でその場を去る。
もう、なにも、考えたくない。
初めからなかったことにしたい。
あの成人式の日から何かが動き出している。
私の知らない何かをあの人は知っている。
何度も思い出そうとし、それが叶わなかった。
私の欠けた記憶をあの人は知っている。
だが彼にはもう、大切な人がいる。
私の入る隙間など――――
ない…
その声に相手の体がビクリと反応する。
それと同時に徐々に自由になっていく体。
少しずつ離れていく、二人の距離。
相変わらず彼の顔は見れない。
「また…何も言わないのか…?」
名残惜しげに指先だけを握られた。
上から聞こえてくる声。
甘えるように囁かれる。
気を、許してしまう…
やんわり握られた手を振り解き、踵を返した。
これ以上、ここにいたくない。
彼の傍にいたくなかった。
「そっか…」
後ろで気弱そうに聞こえてくる呟き。
それを聞こえていないという風に、駆け足でその場を去る。
もう、なにも、考えたくない。
初めからなかったことにしたい。
あの成人式の日から何かが動き出している。
私の知らない何かをあの人は知っている。
何度も思い出そうとし、それが叶わなかった。
私の欠けた記憶をあの人は知っている。
だが彼にはもう、大切な人がいる。
私の入る隙間など――――
ない…
