【短編】2度目の初恋

耳打ちしてくる。

こうなると、美咲はしつこい。
話すまで離れてくれないだろう。

彼女が『誰にも言わない』と言って誰かにバラしたことはないのでそこは信用するが、あまり話したい内容でもない。
だが、お酒も多少入ったのか、いつもなら話さない内情を話し出していた。


「…押し倒されたの」
「それで?」
「拒否した」
「えぇ!?」


付き合って一年半。
キス以上、何もない方がおかしいのかもしれない。


だが、無理だった。


「先輩にトキめかなかった」
「うわ…身も蓋もない…」
「だと思う。だから別れた。それだけ」





“なんでなにもいってくれないんだ”



先輩が叫んだ言葉を思い出す。



我がままを言わない。

欲を言わない。

好きとも嫌いとも言わない。

言いたいことはすべて、心にしまってきた。



それに我慢がならなかったのだろう。

強行手段に出たわけだ。