雅人は店に入ってすぐのカウンターに座った

「俊哉さん、適当においしいの作ってもらえますか。」


雅人 23才 カメラマン


整った顔に抜群のファッションセンス

カメラマンとしての才能も認められ、この若さで大きな仕事をいくつも手懸ける

もちろん言い寄ってくる女もたくさんいる

雅人もそれをいいことに色々な女と付き合ってはみるが、長くは続かない


「はい、どうぞ。

って、お前その頬どうした?

また女泣かせたのか?」


雅人も由樹と同様この店の常連のため、俊哉と仲が良い

といっても年が9才も離れていると、友達というより兄弟みたいな関係だ


「違いますよ。」


そう言いながらグラスを受け取る時、カウンターの奥で泣いている女が目に入ったが、特に気にはならなかった


「あいつ泣くどころか勘違いして勝手にキレて…

最後にはこのとおり

思い切り叩かれました。」

雅人は赤く腫れあがった頬を見せる


「それ、痛そうだな…冷やしとくか?

まぁ、普段の行いだな。

仕方ない。」


「仕方ないって…俺は別に何もしてないですよ!

ただ…やっぱり信用できないんですよね。

疲れるし。」


そう言いながら氷の入った袋を受け取る雅人の顔は、いつになく寂しげだった


「…そっか。まぁほどほどにしとけよ。」


そう言いながら他の客の対応に戻る


俊哉はどこか寂しげな雅人に気付いていながらも、あえて何も聞こうとはしなかった


あいつ、たまにあぁいう寂しげな顔するんだよな…