うちは先生の瞳をじっとみる。


「その代わり、俺が負けたら……お前の好きなようにしていいぞ。

やるか?」



あえなく焦らされてしまった。

大人ってつくづく……醜いものね。



でもま、それだったら……−−



「良いですよ」



うちはそう言って、にっこりと笑顔を作った。


これくらいの笑顔だったら−−たやすい、無駄な笑顔を。



「じゃあ…溺れた方が、欲した方が……
相手の心まで欲しいと思った人が負けだ」



くすり、とまた先生は笑った。


「わかりました」



あたしはそう了解したように、先生の瞳をみて言った。



「じゃぁ、賭け……スタートだ」



そして今度は、先生はいつもの顔でない
“大人な男”の笑みであたしを見た。



−−−そこから、だ。


そこから、このゲームが始まってしまったのだ。



今思えば、うちはこの時から“チャンス”を手にしていたのかもしれない。



先生に出会った時からが、うちの“チャンス”を手にした、始まり…だったのだ−−−…。