前から少し気になっていた。

でも、もう卒業だから。

辛いだけの恋なんてしない!

わかっていたけど。

わかっていたのに。





「ねえ、一緒に帰ろう。」

彼の言葉に惹かれてしまった。




彼にしてみれば、ただ帰る人がいなかっただけ。

そんなのわかってるのだけども、わたしには関係なかったみたいで。

隣を歩く彼に、鼓動が弾む。

どくん どくん どくん




冷めた顔の彼は優しい。

笑顔が、声が、言葉が

わたしの胸をしめつけた。

恋心に火をつけられてしまった。



帰りの道はただただ短く感じ、すぐに別れ道にさしかかる。

「ばいばーい」と陽気に告げられた別れに、寂しい気持ちを押し殺した。

そして負けないくらいの笑顔で返事をする。

「ばいばい、また明日ねー」

とびきりの笑顔で。