ゆびきり

滝川先輩が、人ごみの中に消えて行った後
ママたちは

「あのカッコイイ青年はだれ!?」

って大騒ぎしていたけど

僕の浮かない表情を見てすぐに言うのを辞めた。




胸の中がモヤモヤして息苦しかった。
何でかわからなかった。

どう対処していいかもわからなかったんだ。





「藍、結局どうするの?」

藍ちゃんのママは事態の収拾をはかるべく
藍ちゃんにそうたずねた。


「・・・。」

藍ちゃんは、まだ迷ってる感じだった。


ぼくがピンクが良いって言ったのに
なんで迷うの?



滝川先輩が黒が良いって言ったから?






僕の胸は一層苦しくなって
ついにはズキッと痛んだ。





「黒がいいならそうしたらいいよ。」

僕は藍ちゃんを見ずに言った。
横を向いて言い放った。



「ううん。ピンクにする。」

藍ちゃんは慌ててそう言ったけど
慌てたのがわかってイラっとした。


「いいよ。ピンクにしなくて!僕、むこうの椅子に座ってるから!」


「たっちゃん!!」


藍ちゃんに呼び止められたけど
気づかないフリをして進んだ。



藍ちゃんがどんな顔をしているか
想像はついた。



きっと困ってる。


でも

それはきっと僕のせいじゃない。