ゆびきり



「花火大会の誘いは断られたと思ったけど?」

滝川先輩は藍ちゃんに2歩近づいた。


「だって、藍はたっちゃんといくんだもん」


藍ちゃんがそう言ったので
こっちを見るかと思ったけど
滝川先輩は俺を見ずに


「そうなんだ。付き合ってるってこと?」

「そうです!」

僕は後ろから答えた。




これ以上藍ちゃんと会話して欲しくなかったんだ。


だって


藍ちゃんは
いつもと違ったから。



うまく説明できないけど
僕や友達とは違う目で滝川先輩を見ていた。



藍ちゃんがそれに気がついてるかはわからない。





滝川先輩は少し驚いた表情を浮かべた。

もしかしたら
学年が違うから、僕たちのこと知らなかったのかも。


「まじで?キミどこかで見たと思ったら、新入生代表の挨拶してたよね?」

「そうですけど」

滝川先輩は僕を見た。


「たっちゃんは、藍の素敵な彼氏なの!わかった!?」


せっかく藍ちゃんから視線を逸らしたのに
藍ちゃんがそう言ったから
滝川先輩は藍ちゃんに視線を戻した。

そして、今度は3歩藍ちゃんに近づく。



「とりあえず、黒がいいよ。で、気が向いたら俺と花火大会いこう」

「いきません!」

藍ちゃんは即答していたけど

僕は気がついていたよ。



いつもまっすぐ目を見て話す藍ちゃんが
滝川先輩の目を見ずに答えていたこと。



いつも藍ちゃんを見ている僕だから
すぐに気がついたんだよ。