「でも…藍ちゃんとのことは、もう想い出になったんだな。人に話せるくらいになってよかったよ。」

トオは、すごく優しい口調でそう言った。


もしかしたら、ずっと僕の事を心配してくれてたのかな?


「もう一年経つんだ。今回は自分の中でもある程度整理出来てたし。それに僕…」

「どうした?」

「藍ちゃんに、『たっちゃんは藍しか知らないから許すなんて言えるんだ』て言われて、ずっと気にしていたんだけど…」
「うん…。」

「僕…色んな人と経験したけど、別に藍ちゃん以外を知ってても、僕はあの時、藍ちゃんを許す事が出来てたよ。」

僕の気分は清々しかった。

「知ってるよ。大丈夫。藍ちゃんもわかってるはずだよ。」

そう言いながらトオは、止めてた足をまた動かして、歩き出した。

僕は大きめの声で、トオの背中目掛けて言った。

「トオ!ありがとう。」

「何言ってるんだよ。今日付き合って貰ったのはこっちなんだから。ありがとう。たっくん。」

トオは、振り向き、微笑む。


美智さんにも、それくらい優しくしたら嫌われないぞ。

ちょっとそう思ったけど…今はそう言える雰囲気じゃないから言わないけどね。