僕が藍ちゃんの方へ一歩踏み出そうとした時


トオの後ろに、見覚えのある人影が見えた。


あぁ…

タケだ…。

藍ちゃんの所へ来たんだろうと勝手に解釈して
僕は、もう動こうとしていた足を止め、家の方に向き直した。


「たっちゃん?聞いてる?」

藍ちゃんの不安の交ざった声が聞こえる。


勘のいいトオは、サッと後ろを振り向いた。


「藍ちゃん…あれだれ?」

トオはタケに向かって指を指した。

「え?」

藍ちゃんは、指の指す方を見た。


「あ…あれは…」


僕は聞きたくない。


彼氏だと言われたら立ち直れない。


卑怯だと分かっていた。

でも…聞く勇気はなかったんだ。



僕は部屋に向かって歩き出した。