甘い笑顔のキミ

「もしも…」

『あ、渚?秋に100円ありがとなって言っといて!あと舞、借りてくから!んじゃな!』


最後の言葉と同時にブチッと電話を切られた。

眺めるケータイからはツー、ツーとむなしく音が聞こえるだけ。

……和樹め…。

「…和樹、何て?」

隣から相川くんが顔を覗き込んできて、

あまりの近さに少し驚く。

「え、っと、100円ありがとなって…。」

そう答えると笑いながら「和樹らしいな」と言う相川くん。

というか……

「ごめんね?100円、きっと和樹から返ってこないよ…。やっぱり私が貸しとけば…」

和樹にお金を貸して返ってきたこと、ほとんどないんだよね…。

申し訳なくそう言うと相川くんは明るく笑った。

「気にしなくていいって言ってるじゃん。俺も何回か貸したことあるし。確かに返ってきたことはないけどね。」

和樹ってば相川くんにもお金借りてたのか…。
自分の親戚がそこまで迷惑をかけたと思うと悲しくなってくるよ…。

「でもちゃんと貸した分だけジュースとか奢ってもらったから、藤崎さんも気にしなくていいよ。」

「…でも…」

たった100円でも自分の好きな人が相手だと気にせずにはいられない。

好きな人にはできる限り、迷惑かけたくないしね。

相川くんは「うー…ん」と考えたかと思うと

なにかひらめいたかのように言った。

「それじゃ、かわりと言ってはなんだけど、今日の放課後ちょっと付き合ってくれない?」