ブタリア王国行きの便を持つ航空会社は、それほど多くは無い。


その中でもシチローは、航空運賃が最も安いと言う理由で、『ラッカー・エアライン』という航空会社の飛行機をチョイスした。



「『落下エアライン』って、なんか縁起悪くない?」


「ほら、そこ!
日本語読みしない!落下じゃなくてラッカーだからっ!」


何しろ、一番安い航空会社である。誰がなんと言おうとも、シチローがこれ以外の飛行機に変更する事は考えられなかった。



初の海外での仕事に期待で胸を膨らませながら、空港の出国手続きの順番待ちをするチャリパイ(子豚はいないが)とイベリコ。


「あ~♪海外楽しみ♪
ビールこんなに持って来ちゃった♪」


巨大なバッグのファスナーを開いて、ギッシリと詰まった缶ビールを満面の笑みで見つめるひろき。


それを見たてぃーだが、ひと言。


「あら、ひろき。『液体』は飛行機の中持ち込み禁止って知らなかったの?」



「ええええ~~っ!!
ティダそれホント~!!」


「本当よ。同時多発テロをきっかけに、飛行機のセキュリティーが厳しくなって……当時、結構話題になったから知ってると思ってたけど」


事務所から、何キロもある重いビールをわざわざ運んで持って来たひろきは、泣きそうな顔でガックリと肩を落としていた。