「じゃあ~コブちゃん、王女様になるの?」



「……え?………」



不意にひろきが口走ったその台詞に、シチローとてぃーだが顔を見合わせた。


二人の頭の中には、トランプの『K』の絵札のようにクルンと丸まった付けヒゲをして、膝の上にペルシャ猫を抱きながら大きなワイングラスを傾けて微笑む子豚の様子が浮かんでいた。


「いやいや、いくらイベリコに瓜二つって言っても絶対にバレるわよっ!」


「もしバレなくても、それじゃあブタリア王国の国民が可哀想だっ!」


子豚がここにいないからといって、シチローとてぃーだも好き勝手な事を言っている。


「とにかく、コブちゃんを助けないとな……
イベリコ、奴らの居場所は見当つかないかい?」


シチローはイベリコに親衛隊の居場所を尋ねるが、イベリコは顔を曇らせ答えるのだった。


「もう遅いわ……あのせっかちなブタフィ将軍の事だから、コブちゃんさんはきっと、軍の輸送機の中で今頃は空の上だわ……」


「えっ!!そんなに早く帰っちゃうの!」



イベリコの答えは現実的なものであった。


軍の作戦において、迅速な作戦遂行は最優先とされるべき事項である。


姫(実際は子豚なのだが)の誘拐に成功した親衛隊が、まだ夜のうちに少しでも早くブタリアへの帰国に向けて行動を開始している事は、充分に考えられる事であった。