あれから、およそ二ヶ月の月日が経過していた。


シチローのモールス信号による告発をきっかけに、ブタフィの謀略結婚の企ては様々なマスコミによって取り上げられるようになり、ブタフィに関してはそれ以前の様々な悪事……収賄や人権蹂躙などまでが取りざたされ、しばらくの間悪い意味での世界の注目を浴びていた。


そのブタフィも軍の将軍を解任された後はブタリア王国から突然消息を断ち、現在の居場所は不明である。


『某国のスパイに暗殺された』とか『テロリストに身を堕とした』とか、『ファミリーマートでバイトしていた』とか『よしもと新喜劇に入った』とか……様々な噂が流れたが本当の事は誰も知らない。



そして、新宿の森永探偵事務所では……


この日、チャリパイの四人とこの事務所に訪れていたジョンは、全員でテレビの画面に釘付けになっていた。


「ねえ~まだ始まらないの?」


「あれから二ヶ月かぁ……なんだか懐かしいね♪」


ブタリア王国にとって、今日この日は特別な日であった。


この日二十歳の誕生日を迎えたイベリコ姫は、今日正式にブタリア王国の王女を継承したのだった。


その模様は世界同時中継のニュース番組で、森永探偵事務所のテレビでも観る事が出来た。


宮殿前の広場には、イベリコ王女の誕生を祝福する大勢のブタリアの民衆が詰めかけていた。


そして、民衆の関心はこの新王女誕生儀式よりもむしろ、この後に行われる大きな式典の方に向けられていた。


チャリパイとジョンも、テレビの前でその式典が始まるのを、今か今かと待ち望んでいる。


やがて、宮殿の前の特設会場に立った王室の大臣が、厳かにその式典の開催を宣言した。




「只今より、イベリコ・メンチ王女とロース・トンソーク卿の婚礼の式典を開催致します!」



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