ジョンが示したポーク・メンチ国王からアメリカ大統領宛の親書には、ブタリア王国の国王の立場を超えた、娘を想う一人の父親としての言葉が赤裸々に綴られていた。
その亡き父の優しい気遣いに、イベリコはかつての力強く優しい父の面影を思い出し涙した。
「お父様……………」
一方、寝耳に水のこの親書の存在にブタフィの方は相当困惑していた。
とりわけ、親書にロースの名が載っていた事に驚きを隠す事が出来なかった。
なにしろ生前のポーク国王の存在は絶大で、今でこそやりたい放題の事をしているブタフィでも、軍部に対し特に厳しかったポーク国王の前では、まるで借りてきた猫のように萎縮していた程である。
「そういう訳ですブタフィ将軍!
事の経緯はご理解頂けましたかな?」
ジョンが勝ち誇ったように言った。
しかしブタフィとて、ここまで来てみすみす引き下がる訳にはいかない。
ポーク国王の親書の内容の中から、自分が優位に立つ為のある綻びを見つけ出したのだ。
そして、こんな主張を始めた。
「この親書をよく見ていただきたい!これには、
『イベリコ姫の意志で別の伴侶が見つかれば、この親書は無効である』
とある!即ち、私とイベリコ姫の婚約が決まった時点でこの親書は只の紙切れになってしまったという訳だ!」
「それは、本当にイベリコ姫の意志なのですかな?」
そう言って、ジョンがイベリコに問いかけると、イベリコは直ちに首を横に振って答えた。
「違います!私はあんな人を愛してはいません!」
「イベリコ姫は、ああ言っておられるようだが?」
「ハハハ……参りましたな、そんな事を仰られては……
きっと『マリッジブルー』というやつでしょう。彼女は今、正常な精神状態では無いのです。
そんな事より、私の所にはイベリコ姫が正式に署名した婚姻承諾書があります!これが今回の婚約が姫の意志であるという何よりの証拠ですよ!」
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