チャリパイが閉じ込められている牢獄の鉄格子から鍵までの距離はおよそ5メートル……その鍵をなんとか手の届く所まで引き寄せようと、子豚は強く念じた。


「動けぇ~~う~ご~け~~!」


すると、壁のフックに掛かっていた鍵が僅かに震え出しカタカタと音をたて始めた。


「おっ!キターーーー♪
もう少しだよ、コブちゃん♪」


「コブちゃん、ガンバレ~~♪」


「鍵が浮いたわっ!コブちゃん、あと少しよ!」


「ムキイィィ~~~~~~!」












……そして、翌朝…………


目を覚ました看守は、牢獄の鍵が何故か自分が座っている椅子の脚元に落ちている事に気が付いた。


「おや、何で鍵がこんな所に落ちているんだ?」


あり得ない場所に落ちている鍵を拾い上げ、首を傾げながらまじまじとそれを見つめる看守は、急に何やら嫌な胸騒ぎに襲われ勢いよく椅子から立ち上がった。


「ま、まさか!」


そして、急いでチャリパイとロースが入っている牢獄の中へと目を向けると……














「なんだ……ちゃんといるじゃ無ぇか。驚かせやがって!」






「コブちゃん、あとチョットだったのに……」


「私、お腹が空いてるとあの能力が半減するって事忘れてたわ……」


毎日、僅かなパンとスープでは『コブ・ゲラーの奇跡』を起こすのに十分では無かったようだ。



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