「私の両肩に懸かっているって、それどういう事よ?」


全く意味が分からない……といった表情の子豚に対し、シチローはもう少し分かりやすく説明を付け加えた。


「コブちゃん、確か君は超能力が使えたはずだ!」


「あっ、そう言えば………
そんなこと、すっかり忘れていたわ!」


読者諸君は覚えておいでだろうか?


実は、この子豚はプチ・サイコキネシスの特殊能力を持っているのだ。


その能力を発揮したのは、チャリパイ第二話『~温泉地で熊退治~』とチャリパイ番外編『~国家組織に立ち向かえ~』の二編のみであり、子豚がそんな特殊能力を持っていた事なんて、作者でさえすっかり忘れていた位である。


サイコキネシスの前に『プチ』が付くのは、その能力の規模がかなり地味である事……


つまり、サイコキネシス(念力)と言っても手を触れずに動かせる物は巨大な岩とか人間などの重い物では無く、頑張ってもせいぜい1キロ位の軽い物が精一杯なのだ。


「……という訳で、コブちゃんには看守の隙をついてこの牢の鍵を念力でここまで運んで貰いたいんだ♪」


牢の鍵は、昼間は看守がいつも腰のベルトに括り付けて持っているのだが、その鍵が看守の手から離れる時間帯が一日に一回だけある。


看守も一日中起きている訳では無く、夜になると寝てしまうのだが、この牢獄の看守は、いつも牢の前にある椅子に座って寝ているのだ。


その際、ベルトに付けた鍵の束が邪魔になるのか、看守は鍵の束を椅子の側の壁に付いているフックに掛けてから眠りに就くのだ。


シチローは『作戦決行は深夜3時』と言ったが、勿論この場所に時計などは無い。


要は、看守が眠りに就き熟睡してしまってからという事だ。


「よ~し!みんな、私に任せてちょうだい♪」



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