稟汰の気持ちに、私の心がぐらりと揺らいだ。

『ねぇ、覚えてる?』

ふと頭を過(よ)ぎったそのメール。

悪寒がした。
鳥肌が立って、まるで今も私の背後にあの人が立っているように感じた。


「り、稟汰っ!!」

とっさに稟汰にしがみついた。
顔を上げた稟汰はひどく驚いていた。

「先輩……?」

稟汰は私の震える肩を優しく抱いた。
それはまるで壊れ物を、大事すぎるものを扱うような手付きだった。

本当に力を入れればすぐに壊れてしまいそうなモノのように……。


「りーこせんぱい」

背後から聞こえたのはあの人の声ではなかった。

「……紗耶ちゃん」

「稟汰から離れるどころか、怖がるどころか、ラブラブカップルになっちゃいましたね」

彼女を見れば、目が笑ってなかった。
怖い笑顔だと思った。


「今に見てて下さい。」

何をするか、わかってしまう。
紗耶ちゃん、本気でバラす気……?