「帰りましょうか」

時々垣間見える柴の“男”の顔に私は何も言えなくなる。

敬語と、先輩呼びのお陰で保たれる関係。
もしその二つがなくなったらどうなるんだろうか。



私は柴に促されて教室に向かった。
別に手をつないだわけでもなく
ただ、並んで歩いた。

今までと変わらない隙間を空けて。



「璃子にゃんおかえりー」

「どうだった?」

「それじゃあ璃子先輩、またあとで」

あ、うん。
そう返事を返して去り行く背中を穏やかな気持ちで見つめ…………られなかった。

「璃子にゃん璃子にゃん!!」

「ラブラブじゃないの」

お前らちょっとは、感傷的にならせてくれたっていいじゃん!

私のスーパー穏やかタイムを返せ!!


「何した!?」

「ナニした!?」

「けんぜーん!卑猥ダメ、絶対ぃぃ!」

健全第一!!