そう期待する度、頭の中で声がする。

『相手になんかされるわけない』
と。

どこまでアイツは私を苦しめれば気が済むのだろうか。


優しく私を呼ぶ声も
柴には劣る。

甘く優しく囁く声も
元気な柴の声には劣る。


一番だったあの頃…………。

『璃子には俺だけ』

束縛すらも嬉しかった純粋で無垢だった私。


「じゃあ戻ろう」

「いいの?」

確かに今教室に戻ったところで好奇な目に晒されるのは目に見えている。


だけどこんなところで踏みとどまってどうする?

立ち止まったって、未来は変わらない。
何も動かない。

もう、前の私じゃない。


私の中で何かがはずれた。
重りがはずれたような快感。

「一皮むけたから大丈夫」


清々しかった。

やっと前に進めた気がした。

一年と数ヶ月。
止まっていた私の時間は、
音を立てて動き出した。