私が柴の彼女になれば相手にする確率は微かに上がる。

「それじゃあ先輩、またあとで」

柴は余裕の笑みを見せ、保健室を立ち去った。

私は柴が出て行って15分間、ベッドに座ったままになっていた。



「ウワァァァァ!!」

私ただのバカだろ!?

冷静になって考えてみれば私は本当に何をやっているんだ!


「過去に戻りたい……」

バフッとベッドに倒れ込んだ。



私、柴に変なところ見られちゃったな。

恐怖心が無くなったといったら嘘になる。
でもそれ以上に、柴を失いたくなかった。

誰かが立ち去る後ろ姿を、二度と私のところへは戻ってこない後ろ姿を見ることほど、辛いことはないと

私は思っている。


「りーこにゃーん」

ガラッと元気よく入ってきた輩の名前を呼ぶまでもない。

こんな独特な呼び方をアイツ一人しかいないからな。