『わかったよ』 足元に置いたボストンバッグを 肩に掛けると いよいよ 最後の時 『じゃあな』 濡れた顔を擦って 鼻をおもっきり啜って 『ばいばい』 翔は 口元に微笑みを浮かべ 私に右手を差し出す その手を どうしたものかと しばらく見つめ 差し出された右手のひらを ぱちん と打った 『…ってぇなぁ(笑)』 これが 最後に触れた 翔 握りしめることはできなかった 先生の 翔