『とりあえず…
シャワー浴びて来いよ』
『…しみそう』
『しみるだろな』
翔は徐に立ち上がり
チェストの引き出しを開けて
中から出したタオルを私に投げ付けた
『頭冷やして来い』
タオルとローブを抱えて
バスルームに入ると
大きな鏡に
切り傷まみれの身体が映った。
翔が言った通り
首には鬱血痕
毛細血管が切れて
真っ赤に充血した白目
自分の姿を
直視できないほどに甚振ったリュウを
憎いと思えた
爪先に当てたぬるいシャワーを
ゆっくり上へずらしていく
どこに当てても
傷口にしみて
何度も息を止めた
痛み を知って
今までの自分が
いかに愚か だったかを
知らしめられた気分
“されるがまま” が
こんなに怖いことだったんだと
わかった夏の日。
シャワーから出ると
翔はベッドの上で
ペラペラとファイルを捲ってた
『しみた』
『そりゃそうだ』
何度も同じページを行ったり来たりして
ファイルから目を逸らさないのは
ローブ姿の私に
さすがの翔でも
目のやり場に困ってんだと思う
なるべく翔の視界に入らないように
ベッドサイドのソファの隅っこに
小さく座った
『腹減ったな何か食おうぜ』
目の前のテーブルに
ずっと翔が見てたファイルが飛んできた