ラストイニング〜重ねるイニングの行く先〜

『キャップくらい…。』

そう思いながら藤崎を見る杉山に、隣の入院患者、卓(すぐる)爺さんから声がかかった。

「お気の毒に……。」

「…………。」

黙って杉山は頷いた。

カーテン1枚の隣のやり取りだ。
多少耳が遠くても、さっきの事は聞こえたはずだ。

『あ〜、ネタにされるな…。』


杉山は、世間話好きの卓爺さんにネタを提供してしまったと思っていた。
そう、その夜中までは…。