ピンク色の、ストレートタイプの携帯電話。

付けられている可愛らしいストラップを見るに、少女の持ち物だろうか。

待ち受け画面に映っているのは、女の子二人が笑顔でポーズを取る画像。

親友か、姉妹か。

その笑顔は心底嬉しそうだった。

だが、その笑顔の持ち主も今は恐らく…。

こんな瓦礫と火災の真っ只中に携帯が落ちているのだ。

絶望的かもしれない。

汚れた革手袋をつけた手で、小川は携帯電話を握り締める。

「ぉぉおおぉぉおぉおおおおぉぉぉおぉっ!」

訳もなく、彼は咆哮を上げた。

上げずにいられるものか!

解せない。

何故、何故彼女はこんな目に!

そう思うと、吠えずにはいられなかった。