無事、渡河し終える。

「もう安心ですよ。この先に仮設の避難所があります。そこでならゆっくり休めますから」

声が震えそうになるのを堪え、豊田は笑顔で言う。

「ありがとうね、ありがとうね」

何度も何度も。

両手を合わせて拝むように、老婆は豊田に礼を言いながら、別の隊員に避難所へと案内されていった。

その姿を見送りながら。

「麗華」

豊田は麗華に悟られぬように目元を拭う。

「しんどい事も多いけど…戦術自衛隊って遣り甲斐あるよね」

そんな事を呟く豊田。

「…当たり前じゃないですか」

麗華は満面の笑みを浮かべて見せた。