葵は、颯太があやすとよく笑い、寛太があやせば、なぜか泣き声をあげた。


「ちぇっ!なんだよ!」

「ぷっ。…寛ちゃん、あおちゃんに嫌われちゃったねぇ。」

そう言って、からかう母親だったが、

「ふんっ!別にイーよ!だいたい俺は、女なんかと遊ばないし!」

「寛太はさ、男の子が生まれてほしかったんだよなぁ。」

兄である颯太の話を聞いて、

「あらら…ごめんね。お母さんが弟を生んであげれなくて。」

とりあえず謝ってみせる。

なのに、

「えー!このうちには無理だよ!狭いんだからさ…それより早く自分の部屋がほしい!」

「はいはい。…やっぱり寛ちゃんには弟か妹が必要だったかなぁ。」

そこへ透かさず、

「おまえは自己中だからな。自己中〜!」

口の達者な颯太がチャチャを入れ、

「うるせぇ!」

「いっ!て〜なぁっ!」

「兄貴ぶるなっ!」

「兄貴だもん。」

「たった3時間、早く出てきただけだろ!」

「それを兄貴って言うんだよ。」

たちまち喧嘩に…こんなことは日常茶飯事で、

「やめなさいっ!」

まずは母親の一喝が飛び、

「だってコイツ、いちいちムカつくんだよ!」

「先にぶったのは寛太だ!」

「颯太が自己中って言ったからだろ!」

「ホントのことを言っただけですぅ!」

「もう〜うるさいっ!」


シメのげんこつなど、もう慣れたものと言わんばかりの二人だった。