「ごめん。寛太のヤツ、俺が告られてると勘違いするくらいだから、おまえに脈は無いと思って…」

「うん、イーの!それで良い!」

「?…イーのか?」

「何の接点も無い私を、あんたとのコトで気に掛けてくれてんだもん!運が回ってきたんだよ!私、今、一番の幸せを感じてるの!」

「はぁ…(こっちの迷惑は考えないんだ…)そーですか。」

「ありがとう!やっぱりあんたに相談して正解!」

「は、ははは…」


結局、高見優菜の想いは寛太に届かぬまま、気付けば中学3年となっていた。


そんな欲も持たぬ、慎ましやかな少女の想いが神に届いたのか…

最後の最後で、優菜は寛太と同じクラスになった。

なのに、

「俺の方で悪かったなぁ。」

相変わらず、颯太との仲を勘違いしたままの寛太が優菜に言うと…

「ホント。なんであんたの方かなぁ。」

心にも無い言葉を返しては喜ぶ優菜を、颯太は放っておけない様子で、

「ったく。何やってんだよ。」

「いーの、いーの!」


それ以来、颯太と優菜の二人の間には男女の友情が成り立ち、

そんな二人を見て、周囲は、

“あの二人、きっと何かあるにちがいない”

と思うのだが、

あの、寛太の双子の兄であり、
わが校が誇る期待の秀才君に良からぬ刺激を与えなどしたら、校則違反と同様の罰がくだされそうで…誰一人、二人の仲をからかったりしないどころか、
“暗黙の了解”で、密かに見守られるのだった。