並木道を抜けると、突き当たりは大通りの車道。



ビュンビュン車が通ってる。


そこを曲がって、まだ歩く。


ひたすら、碧様は歩き続ける。


バスも電車も使わない……。


なんで?



美術館、大きなマンション、スーパーなど通り過ぎて歩く、歩く……。


どうなってるの?


やがて、住宅街に入った。


もうかれこれ、45分は歩いてる……。


なんで歩くの?



いいかげん、疲れたんですけど……。


休憩しない?


そうしていると、碧様が小さな和風の一軒家に入っていった……。



私は走ってそこまで行き、碧様の家か確認する。


表札にはむろん、『涼宮』と記されている。


碧様は、目の前にある玄関の格子戸を開けて家の中へ入ったようだ。


ここなんだ……。


塀越しに柿の木が見え実がいくつか、なっていた。


門扉の脇の塀からキンモクセイが顔を出していた。


甘味を帯びた強い芳香を放つ黄赤色の小花がむらがって咲いていた。


道路上に散った小花が一面に敷き詰められていて、小さな絨毯のようになっていた。


いい匂い……。


キンモクセイ好き。


玄関前には鉢植えが並んでいて、なよなよとしたピンクのコスモスが風に吹かれて大きく揺れていた。