チェリーガール

彼のあまりの口の臭さにキスの感覚がわからなかった……。


嗅覚だけでなく触覚も麻痺したんだ……。


また、泣かれたら困るから唇を離して口臭を指摘するわけにもいかず、ただただ耐え忍んだ。
(頑張ったよ、わたし……)


でも、そのうち頭痛がしてきて憂鬱になったんだ。


だから、ファーストキスは嫌な思い出。


好きな人なら許せたけど、そうじゃない人だったから不快だった。


甘くない
ただ苦いばかりの中学時代の恋愛―――――


でも、これ恋愛っていうのかなー?


疑問だよ……。






「あはははははははははっ!!」


声高々に笑うのは、ウケやすいたまき……。


爆笑してる。


「きゃはっ。面白い。マジウケた~♪」


「笑わないでよ……」


「だって、面白いじゃーん。口が臭かったんでしょ? それ捏造話じゃないよね?」


「もう……いい……。忘れてください……」




たまきは、スパゲティを食べ終えてペーパーナプキンで口を拭いた。


ウェイトレスがやって来て、皿を下げる。


それからすぐ、ウェイターが注文していた食後のデザートを運んできてくれた。


たまきの前にチーズプリンパフェ、私の前にクリームソーダを置く。



「いただきまーす!」


目をキラキラ輝かせてパフェにスプーンを入れるたまき。


私もこの至福の時を待っていた。