チェリーガール

バカってひどい……。


自分はバカだと思う。


でも、人に『バカ、バカ』言われたくない。


どこの世界に『バカ、バカ』言われたい人がいますか?



「あのね、さっきの金髪男は自分がバカだから碧君を妬んで挑発したんだよ。その挑発に乗る碧君も碧君だよ。あんなバカ、ほっときゃいいのに……。わざわざ振り返って睨むんだもん。相手にしないで無視すればよかったのにー」


「でも、『寒冷前線』ってあだ名とは思わないよ。それ、何なの?」


「学校で習ったでしょ? 『寒冷前線』ってのは、冷たい気団の最前線。気温を急に下げるやつ。たしかに、碧君が合コン行けば温度下げそうだね」


「なんで呼ぶの?」


「冷たいからでしょ? 学校でもあだ名がいくつかあるよ。聞きたい?」


「うん、うん。碧様のこと知りたい!」


「『寒帯地方』でしょ。それから、『氷点下』ってのもある。あっ、それと『札幌雪祭り』を忘れてた」


「それ……どうして……?」


「理由は札幌雪祭りの雪像よりも冷たい男だから」


「札幌雪祭りの雪像より冷たいって人間じゃないよ……」


「そう。だから、彼は人間じゃない」


たまきは、和風ハンバーグをお箸で細かく切って口に放り込んだ。


おいしそうに味わって食べている。


私は、食欲が失せてしまった……。


シーフードスパゲティをたまきに差し出す。


「これ、食べて……。食べられなくなった……。あげる……」


「えー! こんなにいっぱい残して! もったいない! それとも、これは情報料? 碧君情報なら他にもあるよ」


「もう、聞きたくないかもしれない……。そこまで冷たかったら、ひくよ……。冷凍人間だ……」


「まー、冷たい男って評判で悪い噂ばっかりの人だからね。聞かない方がいいかもしれない。噂では、碧君の半径1メートル以内は吹雪いてるらしい。クールな男を通り越して、ここまで来たらこわいよね」