チェリーガール

「ひゃあー! 降ってるねー。雨ザーザー降りじゃん」


大声で正面玄関の入り口からこっちに近づいてきたのは、キャバ嬢のような格好したたまきだった。


彼女はいつもそんな感じ。


ルックスは、私たちと同じでたいして可愛くないから売れないキャバ嬢といったところだ。


不思議なことに傘を持ってない。


なんで?


「帰り、どうしよー? 困ったよー。彼氏に今さっきここまで送ってもらって車で来たんだけど、帰りはバイトで迎えに来れないってー。超最悪ー。濡れて帰れってことー?」


「なら、コンビニでビニール傘買えば?」


「あっ、そっか。そうするー。すだちって頭いつも冴えてるねー」


「それよりも、首にキスマーク付いてるよ」


そう言ってすだちがたまきの首を指差した。


あっ。


本当だ。


キスマーク付いてる。


「お盛んなこと……」

たまきに囁いて笑う私。




「マジで? やっば……どうしよ……。まー、ファンデで隠せばなんとかなるよね……」

たまきは、エレベーターのボタンを押しながら少し困った顔をした。


ガタン。


エレベーターの扉が開く。


私たちは3人とも、授業が始まるので中に乗り込んだ。