チェリーガール

「よかった。心のしこりが取れたよ。なんか謝るまで帰れなくて……」


たまきが泣きやんで、はにかむ。


「謝らず、そのまま帰ればよかったのに。さあ、さあ、帰った、帰った。私はこれから寝て、しっかり風邪を治すんだから」


「じゃあ、私は行くね。早く治るように祈ってるから。お大事に……」


まだ気にしているのか、その声は
たまきらしくなく弱々しかった。


彼女はそろそろと立ち上がり歩いて、ドアを開けて帰っていった。


部屋には私以外、誰もいなくなった。


よかった……。



これで、思う存分泣ける。


誰にも気を遣わなくていいんだ……。


ふと、無造作に置かれた花束に目を向ける。


床の上の物の上にそれは、あった。


ベッドから出て、花束に触れる。


綺麗な赤い薔薇の花……。


私のために、この花を……。


まだ、この花をお店で買っていた時は私に愛情があったはず……。


それなのに、今は……。


もう、愛情の欠片ひとつ残ってないんだろうな……。


私はこんなに好きなのに……。


愛してるのに……。


すごく嫌われてしまった……。


そう思うと……。


じわっ。


涙腺が緩む。