いつの時代だか、どこの国かは解りません。

周りの国は互いに戦争をしていたので、きっと世の中が乱れていた時でしょう。

ある国に、それはそれは優しい伯爵がいらっしゃいました。

彼は西にケンカがあれば白馬を飛ばし、身を盾にしてでも仲裁し、東にイジメがあれば身代わりになってでも助けに行きました。


領民はこの少し変わってはいますが、大変に優しい伯爵を慕っておりました。


彼の名は、シャルル・ド・エーム、
人々は尊敬の念(?)を込めて『ドM伯爵』と呼びました。



さてある日のことでした。

彼はお供のメイド長、エリザベート・エスプリと一緒に領内を見回って居ました。


すると幾人かの農民が伯爵達に近付いてきました。

「伯爵様、何時もわしらの為にありがとうございます…」

「いえいえ、僕がご飯を食べられるのは、皆さんが小麦なんかを納めてくれるからです。で、今日はどうしました?」

「ええ、実は…夏の日照続きで小麦が去年の半分しか採れなくて…」


「それは大変です!皆さんちゃんと食べられるんですか!?」

「あ…いえ、お城に納める分はあるんですが、わしらが食う分は…」

なんと言うことでしょう!自分のせいで愛する領民が苦しんでいるとは!優しい彼は

「それはいけません!お城に納める分は採れた量の一割でも構いません!貴方達に倒れられたら、この領地は駄目になってしまいます!小麦は買えばいいのです。だけど貴方達の生活はお金では買えないのです」

と即決即断!流石デキる伯爵は違います!