我輩はテトである。片山家に居候する身の猫である。よくは覚えては無いが、何でも小さい頃に棄てられて、空き地でぴーぴー泣いている所を「学校」とやらの帰りの片山家長女、我が主アユミちゃんに拾われた様である。以来、彼女に「テト」と名付けられ、片山家にて飯を食む様になった次第である。



『いってきま~す!』
『あーアユミ~給食袋忘れてるわよ~全く…車には気を付けなさいよ~!』

元気よく飛び出すが必ず何かを忘れる。そして何事も無かったようにまた走り出す。毎朝、片山家で行われる営みである。
毎日何かを「学校」とやらに持っていかねばならぬとは、猫には全く理解しかねる。もしかしたらボスへの捧物か?といぶかしくなることもある。
しかし同時に「学校」とやらに激しく興味を惹かれるのも事実。


よし、今日は「学校」とやらにいってみるか

我輩は飯もそこそこ、以前、主につれられて行った「学校」ヘの道を思い出しつつ歩いた。



『いよぅテト、朝っぱらから散歩かい?い~い御身分だねぇ~』


振り替えると一匹の黒猫が居た。
コイツはクロベエ。この近辺の野良猫だ。


『我輩は今忙しい。「学校」とやらへ行く途中なのである。何もないなら此れにて失礼させて頂く。』


するとどうだろう。「学校」と言う言葉を聞いただけでクロベエが震え出す。


『が…学校!?にゃ、にゃぁ考え直した方がいいぜ。あんにゃとこ猫の行く所じゃにゃいぜ!』


ふむ、近所一でかい犬のゴン太に平気で喧嘩を売る程の剛の者であるクロベエがこんなに脅えるとは。
ますますもって興味深い。
我輩は脅えるクロベエを尻目に「学校」へと急ぐ。