不意に顔の右半分からキュィィンと機械音がする。


…俺の躯の半分はサイバネティクス、つまりは機械なのだ。もう四、五年前だろうか。以前に居た部隊で同僚を爆風からかばい、右手足、そして顔の右半分をもってかれた。

最初は機械の義手義足そして義眼に戸惑った。何せ二十五年生きてきて百メートル先が見えるなんて普通ないからな。「赤目」ってのは、その義眼の赤外線レーザーの色からだそうだ。



一先ず女を自由にするのが先か…

俺は女を羽交い締めにして居る一番デカイ男に肩口に照準を絞り引金を引く。

銃声と共に派手に大男が吹っ飛ぶ。

続いて脇に居たリーダーっぽい中年の脚に射撃、ヒット。

中年男は脚の激痛に転げ回っている。

一瞬の出来事に男達はパニックに陥っている。ある者は腰を抜かし、またある者はその手の短銃を乱射している。
俺はそのまま、第三射を腰抜の足元に、第四射を乱射男の銃に撃ち込む。ヒット。腰抜も乱射男もほうほうのていで逃げ出した。

女はと言うと拘束が解けた時に逃げたようだ。

ふぅ…さてと、どう来るかね…


俺は再びスコープを覗く。リーダーっぽい男が立ち上がりこちらを指差して喚いている。すると残りの大男ともう一人の男が担いでいた銃を撃ってくる。

やれやれ…

俺は溜め息をつく。そしてそのまま三人に向けて引金を絞る。頭部に銃撃を受けて三人とも動かなくなる。


「…任務終了…エイミングスナイプモード解除」


義眼の狙撃モードを解除した俺は、また溜め息をつきそのまま空を見上げる。

俺の心みたいにどんより曇っている。罪はないとは言わないが、戦争が起こる前は野盗も普通の市民、この仕事をしていなければ俺も向こうの一員だったかも知れない訳だ。
そう考えると切なくなる。


『…ーク!ジーク!返事しろ!』

バーニィの声で現実に戻される。

「バーニィか、一寸ごたついてたが問題ない。どうした?」
『あぁ、敵さんがいくつかそっちに回った。気を付けろや』
「ラジャ、気を付ける」

そう、俺には干渉に浸る暇なんて無い。

俺は今日何度目かの溜め息をついて銃を構えた。

END