グリーンライダー

 気になること、尋ねたいことは多々あれど、俺は睡魔に身を任せることにした。ベッドに倒れ込み、意識を失う寸前。
 「おやすみなさい」
 というハリーの声を聞いた気がした。

 目を覚ますと、俺はベッドの上で掛け布団を抱き締めていた。
 目尻を擦りながら起きると、窓から差し込む日光で目が眩んだ。
 目がなれてくるまで待ち、俺は部屋を見回す。
 ハリーは、部屋の角で椅子に座って読書をしていた。俺がおはようと声を掛けると、本から顔上げてこちらを向く。
 「おはようございます」そう答えたハリーの手の中には、既に本はなかった。俺は昨日から気になっていたことを尋ねた。
 ハリーは物を自由に出せるのだろうか?
 「ここは、いわゆる時の牢獄のようなものでして」ハリーは自嘲気味に答える。
 「無限の孤独を生きるための不自由はないのです」ハリーの答えには、常にもう一つの疑問があるような気がする。
 俺はそれを聞いてみた。
 生きるためのものが出せるということは、死ぬことも出来るのでは?
 「肉体的な死はもう過ぎました。ここでは、私は決して死ぬことは出来ない」
 ハリーは立ち上がった。
 「逃げることは赦されないのです」