しかも、テーブルの上には食事まで乗っている。
 やはり夢か?
 俺は自分の頬を抓る。
 痛い。
 夢ではないようだが、どうなのだろう?
 誰ともなく問うてしまった。

 「これから食事なのですが、一緒にどうですか?」
 色々と謎はあるが、人間腹が減ってるとろくなことをしない。
 俺は誘いを喜んで受けた。
 食事が終わって一息ついていた時、俺は聞いてみた。ここはどこなんですか、と。
 「ここは罪人が彷徨う孤独な場所」
 彼はそう答え、ハリーと名乗った。
 俺も慌てて名乗り返す。
 そして、俺はハリーの言ったことの重大性に気付く。罪人が彷徨う場所ってことは、死後の世界か何かなのでは?
 俺は堪(たま)らず、ハリーに聞いてみた。
 「まあ、近いですね」
 ハリーは苦笑して答える。
 俺は死んだのか、と続けて尋ねた。
 「いいえ」
 ハリーは答えた。
 俺は安堵の息を吐くと共に、新しく頭に浮かんできた疑問を尋ねてみることにする。
 俺は何故ここに、と。
 「さあ?」ハリーは、おどけた動作と共にそう答えると、「でも時々いますよ、君みたいな客人は」と続けた。
 そうなのか。
 俺は納得することにした。空腹を満たされて、死んでいないと判った今、焦ることはあるまい。
 そう思ったからだ。