俺は、ベッドから転げ落ちた時にぶつけた側頭部を擦りながら立ち上がった。
　額に手を翳して空を見上げる。
　太陽が俺を見下ろしていた。
　確かに感じる痛みに、俺はこれが夢か現実か判らなくなってしまった。

　どちらにしても、ここでじっとしてるのも飽いた。
　俺はどこまでも続いていそうな草原を歩き出す。
　立ち止まり、深呼吸をした。
　肺が新鮮な空気に満たされていくのが判る。
　日頃澱みきった空気に慣れ親しんでいる者たちが、アウトドアに興じる理由が判る気した。
　俺もまた、澱んだ空気に慣れている者の一人だからだろう。
　俺は再び歩き出す。
　しばらく歩くと、川のせせらぎと共に川が見えてきた。
　水を見た途端、喉の渇きが押し寄せてくる。
　気がつくと、俺は駆け出していた。
　喉の渇きが益々ひどくなる。
　だが、気にしている余裕はない。
　喉の渇きを感じている時点で、水分不足なのだから。
　川辺に膝をつき、両手で川の水をすくう。
　透き通る水を一気に飲み干す。
　冷たい水が渇いた喉を潤しながら、食道を通り胃に至る。
　それと共に、背筋をぞくぞくっとした感覚が通り抜けた。
　俺は２度３度とその行為を繰り返して、やっと落ち着くことが出来た。