グリーンライダー

 カーテンの隙間から差し込む光で、俺は目を覚ました。
 ベッドから上半身を起こし、大きな欠伸と共に伸びをする。
 時計を見た。
 いつも起きる時刻。
 テレビを点ける。いつものニュース。
 長い夢を見ていた気がするが、頭はスッキリとしていて、昨日の酒も残っていない。
 ベッドから下りて朝食の準備をする。
 白いご飯をレンジで温めつつ、冷蔵庫を開ける。
 中から梅干しを出し、インスタントの味噌汁を作る。それらをテーブルの上に並べ、ニュースをぼんやりと見ながら朝食を摂る。
 梅干しを食べてご飯をかき込んだ瞬間、ハリーとの奇妙な数週間を思い出した。口の中の物を吹き出さなかったのが不思議である。
 急いで新聞を取ってくると、俺は日付を確認した。
 数週間どころか一日しか経っていない。
 いや、眠って起きて一日が経っているだけなのだから、一晩だ。
 ハリーとの暮らしは夢だったのだろうか?
 俺は自分の頬を抓った。
 痛い。当たり前だ。

 俺は頭を掻いた。
 少し考えて、取り敢えず〝夢〟ということにしておく。
 これから、いつもと同じ毎日続く。
 だが、俺はそれに満足していた。
 部屋を出る時、俺は彼女に貰ったハンカチをズボンのポケットに入れ、昨夜渡しそびれた指輪を胸の内ポケットに入れる。
 俺は普通を絵に描いたような男だから、セオリー通りに給料を3ヶ月貯めた。

 人間、普通が一番である。