グリーンライダー

 彼は彼女に、自分の正義を訴えます。
 しかし彼女は聞かず、何度も自首を願いました。
 話し合いは、決して交わらない平行線でした。
 そして、彼の最も恐れていたことは現実となってしまったのです。
 彼女は言いました。
 〝あなたのしていることは、問答無用に自分の正義を押し付ける悪だ〟と。
 その言葉を聞いた途端、彼の頭の中は真っ白になりました。
 たとえ神に否定されようとも、彼は自分を貫くことが出来た。
 しかし、ただ一人の愛する女性に否定されて、彼は絶望しました」
 ハリーはそこで言葉を一旦区切り、自分の掌を見つめる。
 「そして、気が付くと、彼は彼女の首を絞めていました。
 彼は自分のしていることに気付き、急いで手を離しました。
 しかし、その時にはもう手遅れでした。
 彼は彼女の苦悶の表情を見ながら、ただひたすら泣きました。
 彼は自分の正義を捨て、彼女の遺体と共に人々の前から消えました。
 それから彼は、無限と続く孤独の中を一人で過ごすことになります」
 ハリーは俺を見る。
 「時々訪れる客人に、心を癒されながら、ね」
 ハリーがそう言った時、俺は急激な眠気を感じた。
 瞼が重い。
 俺は意識を失った。
 「ありがとう」
 ハリーの声が聞こえた気がした。