グリーンライダー

 彼女に会いたい。
 そう洩らした俺に、ハリーは寂しげな視線を投げかけた。

 少しの沈黙の後、ハリーはゆっくりと口を開く。
 「少し、昔の話をしましょう。孤独で哀れな、一人の男の話です」
 ハリーがそう言うと、俺とハリーの前にそれぞれグラスが現れた。
 中には透明な液体が入っている。
 「焼酎です」
 ハリーは言った。
 俺はそれを飲んでみた。確かに焼酎だ。しかも俺の好きな芋焼酎。
 ハリーも焼酎を飲む。
 「ほんのり甘いですね」
 俺は頷いて、もう一口飲んだ。
 「その男は、異常なほど正義感が強い男でした。自分が悪と思うものを決して許せないほどに。
 彼は、当然の如く警察官になりました。
 しかし、現実は彼の理想とは違いました。
 冤罪や法律で裁けない罪に心を痛めた彼は、自分で悪を裁くと決意しました。
 そうして、彼の正義の名を借りた殺戮が始まったのです。
 殺人を犯した者には、問答無用の死を。
 それ以外の者には、生活する上で必要な機能を残した制裁を、彼は与え続けました。
 メディアは、彼のことを異常犯罪者と罵りました。
 しかし、自分が正しいと信じる彼は、犯罪者を裁き続けました。
 そして、誰ともなく人々は、彼のことをこう呼び始めました。
 〝グリーンライダー〟と」