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チューリップ畑の前でふたりはバスケットに入ったサンドイッチやサラダ、から揚げ、色とりどりのおかずを広げていた。
頬張って咳き込む彼にお茶を渡して、ありがとうの言葉にふんわり笑んで。
どうかな?と彼女は照れを滲ませる。
彼は首を上下に振ってまたサンドイッチに手を伸ばす。
揺れるチューリップ。
舞う髪の毛を右手で押さえて彼女は目の前の光景を静かに眺める。
僕が小学生の頃、父さんが連れてきてくれたんだよね。
彼も目を細めて前を向く。
たださー、父さん花粉症でさ、一緒に見に来たのは一回きりなんだよね。
へぇ、と彼女はチューリップを見つめながら相槌を打つ。
まぁそれで僕はときたま此処に来て見たりそうじゃなかったりしたわけだけど。
なにその曖昧な感じ、とふふっと笑う。
そんな彼女を横目で見て、またチューリップ畑を見て彼は続ける。
まぁつまりは……
ごにょごにょと彼は呟く。
ぎゅっと彼女は彼の背中に抱きついた。






この景色好きだから、……連れてきちゃった。






end.