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花見に行こう。
ゆるりと弧を描く口許で彼は言った。
え…?ほんとう?
ふたりで座っているソファ。
彼女は隣を向いて開いた口を隠すように手の平をかざす。
そう、桜じゃないけど。
だめ?と膝に肘をついて彼女の顔を覗きこむ。
彼のその一言にだめじゃないけど何見るのと彼女は首を傾げる。
そんな仕草に彼はもっと頬を緩ませた。
僕の地元にね、いいスポットがあるんだ。
ん?何の?
彼女は頷いた後また不思議そうな顔をした。
まぁそこは見てからのお楽しみってことで。
ふぅん、気になる…。
ふたりで茶化しながら見ていたテレビを放って彼女はまだしばらく腕を組み指を唇に押し当てて考えていた。
……花見の時、おべんと食べたいなぁ。
甘えたな彼の呟きに気付いて彼女は頬を綻ばせた。
気合入れなくちゃね。
え、愛情混ぜてよ。
なにそれ、くさっ!
顔を見合わせてくすくす笑い合っていた。






遠出なんて久しぶりじゃない?
窓の外を見ては感嘆の声をあげ、彼女は彼に笑いかけた。
彼は多少の苦笑を漏らしながらアクセルを踏んだ。
いきなり速度を上げた車に驚いて目をぱちぱちと瞬いた彼女。
助手席に笑いかける顔はいたずらっ子なもの。
彼女はふいっと顔を背けた。
ごめんね、ちょっと悪戯しようと思って…とあわあわと弁解する彼。
彼女の耳が赤いことに気付けば彼も口を手のひらで覆って窓の外に視線をずらした。






無邪気な顔を見せる。
ふたりの前には、赤、白、黄色。