「ねぇ、龍之介。私のワガママ聞いてくれないかな?」
「薫子がワガママを言うなんて初めてですね。いいですよ」
そう、薫子は私に対してワガママを言ったことなんて一度もなかった。
自由にマイペースにいつも行動をしている薫子は、いつも私を優先に物事を考えていた。『もっとワガママを言ってくれてもいいのに』と何度思ったことか。
だから、薫子が初めてのワガママはどんなものかと少し期待をしてしまう。
「この桜の木のそばに家を作ろう。小さくても構わない。そこに私達で住みたいんだ」
「っ!…ええ、作りましょう。私達家族の家を桜の木のそばに…」
薫子…。
貴女のワガママは私にとってはプレゼントに思えたんだよ。
薫子は、地面に落ちた桜の花を拾い大事に握りしめていた。
この時、私は思ったんだ。
『この幸福な時間が永遠に続けばいい』
と…。
でも、それは叶わなかったんだ。

