風に運ばれてきたのか、私が着ていた着物には無数の桜の花びらがついていた。 私は、自然と敷地内にある桜の木に足を運んだ。 そこには、薫子もいた。 薫子は、桜を静かに1人で眺めていた。 「薫子」 「あっ、龍之介…」 「そんなにその桜を見てどうしたんですか?」 薫子は背の高い桜に手を伸ばして、微笑んでいた。 「この桜、とても好きだと思って龍之介が来るまでずっと見てたんだ」 薫子が好きだと言った桜は、他の桜よりも少し小ぶりだが他の桜に負けずに綺麗に咲き誇っていた。