「父さんがそう言っていた」
少女はブランコから勢いよく飛び降りて、再度私を見た。まるで、いたずらっ子のように少女は笑っていた。
「君は一体……」
「私は、桜宮薫子だ。東雲龍之介」
これが、私と薫子の出逢いだった。
《桜宮》という苗字は聞いたことがあった。他の国に負けない技術を誇っている、化学者の家庭だ。東雲家とも何度も交流があったはずだ。
その後、薫子は『やべっ、門限の時間だ』と行って走り去ってしまった。
私は、この薫子との初対面から彼女のことを少なからず気になっていた。
彼女に会えると思い何度も公園を訪れた。でも、彼女と公園で会えたのも数回だけだった。

