運転するのは弘。
助手席に萌佳が乗って、後ろの席にアタシと涼が乗った。
・・・っつか、バレバレなんだけど萌佳。
萌佳、思いっきり弘狙いじゃん。
アタシは、外の景色を見た。
もう周りは暗くなっていて、街のネオンが輝いていた。
アタシと同い年くらいの人が、大きな鞄を持って制服を着て歩いている。
部活帰りだろうな。
もし、アタシが普通の家に生まれていて、普通の両親がいたら。
アタシは、あの人みたいに生きてたのかな。
でも、絶対にあり得ないから。
考えるだけ無駄だ。
「香乃?香ー乃ちゃんっ」
「えっ。あっ、何?」
またボーっとしていて、涼が声をかけているのに気づかなかった。