それから食事しながら他愛もない話をしていると突然石井先生が言った。
「あの・・・失礼ですけど・・・名前はなんていうのですか？」

ひどく恐縮したような様子を私は不思議に思った。

「あの・・杉原ですけど・・・ご存知なかったですか？」
私の返事に石井先生は慌てて言った。

「あの・・・下の名前・・・。」
優しい先生の瞳に見つめられては教えないわけにはいかない。

「えっと・・・結衣（ゆい）です・・・。」
「そうですか。いい名前ですね。」
そう言う石井先生の笑顔はとても優しく見えた。


「先生の下の名前はなんていうんですか・・・・？」
私もなぜ自分がこんなことを聞いたのかわからなかった。


「透（とおる）です。石井透。」
そう言うと石井先生は穏やかに笑ってみせた。




このときからもう私達は恋に堕ちていたのかもしれない・・・
気付いていなかっただけで必要としていたのかもしれない・・・・
もっと早く気付いていれば私達は幸せになることができたのかもしれない・・・